日本気象学会2013年度春季大会公開気象講演会

終了しました。多数のご参加ありがとうございました。

ポスター:下記画像をクリックすると拡大表示されます


テーマ:「将来の再生可能エネルギーと気象」
  (「日本気象学会 教育と普及委員会」と合同企画になります)

日時:2013年5月18日(土)(大会最終日)14:00〜17:00
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター(http://nyc.niye.go.jp/
    セミナーホール417(センター棟 4F)(大会A会場)
住所:〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3−1

内容:
 日本気象学会2013年度春季大会の開催に合わせて、一般市民の方々に気象に関する最近の研究成果や関心の深い事柄について分かりやすく解説することを目的とした公開気象講演会を開催します。今回は教育と普及委員会とメソ気象研究連絡会との共催で「将来の再生可能エネルギーと気象」をテーマに取り上げます。大震災以降、再生可能エネルギーが注目されるなかで、気象とも関係の深い太陽光発電と風力発電の関心が高まっています。これらの再生可能エネルギーを効率よく活用するためには、日射量や地上風をできる限り正確に予測するメソ気象学の応用技術が重要となります。今回の公開気象講演会では、再生可能エネルギーを活用するための現状の問題点と将来展望について、気象学的な観点から関連分野の専門家に講演して頂くことにしました。ふるってご参加下さるようお願いいたします。

プログラム:
総合司会:加藤輝之(気象研究所)
14:00-14:05 「趣旨説明」
14:05-14:30 大関 崇(産業技術総合研究所)「再生可能エネルギーと電力事情」
14:30-14:55 山田芳則(気象研究所)「気象庁数値予報モデルの現状と今後の展望」
14:55-15:20 大竹秀明(産業技術総合研究所)「気象庁数値予報モデルの日射量検証と問題点」
休憩
15:30-15:55 安田 陽(関西大学)「欧州の風力発電の躍進と出力予測の便益」
15:55-16:20 嶋田 進(産業技術総合研究所)「風力発電と気象との関わり」
16:20-16:45 中島 孝(東海大学)「衛星データを利用した再生可能エネルギーの推定」
16:45-17:00 総合討論

連絡先:加藤輝之(気象研究所)
E-mail:tkato@mri-jma.go.jp(@は小文字にしてください)

講演要旨

大関 崇(産業技術総合研究所)「再生可能エネルギーと電力事情」
 太陽光発電システムは、昨年度より導入された固定買取制度も拍車をかけ、普及が加速的に進んでいます。太陽光発電システムの課題には、ひとつに発電コスト低減がありますが、発電コストが下がったら無限に導入できるかという問題もあり、そう一筋縄にいきません。エネルギー源のひとつである太陽光発電の普及には、エネルギー・電力ネットワークとの協調が必須です。本講演では、太陽光発電システムが大量導入され、エネルギーネットワーク中で一翼を担う存在になるために必要な技術課題を解説します。

山田芳則(気象研究所)「気象庁数値予報モデルの現状と今後の展望」
 気象庁が発表している毎日の天気予報や注意報、警報などのほとんどは、数値予報モデルによって計算された大気の将来の状態に関する予測に基礎をおいています。数値予報モデルとは、気温や風、降水、日射量などが時間的に変化していく様を物理法則によって表現した集合体のことで、将来の大気状態を予測するために用いられるものです。天気予報だけでなく、太陽光や風力による発電などの再生可能エネルギーの分野でも、日射量や地上風の精度よい予測技術が求められています。数値予報モデルの基本から、気象庁における現在の数値予報モデルの概略と今後の展望について解説します。

大竹秀明(産業技術総合研究所)「気象庁数値予報モデルの日射量検証と問題点」
 太陽光発電システムが大量に導入されつつある現在、 気象庁数値予報モデルによる日射量の予測には太陽光による発電量予測の分野から大きな期待が寄せられています。しかし、予測値には必ず誤差が含まれ、その誤差特性を検証・把握しておく必要があります。最近の研究から、予測日射量には観測値に比べて夏季(冬季)は過小(過大)に予測される傾向があり、 南西諸島では予測誤差が大きくなる傾向もあることがわかってきています。このような検証は、数値予報モデルの問題点を明らかにし、 今後のモデル改良につながるヒントを与えるとともに、 再生可能エネルギーを含めた電力系統の運用計画の分野にどのような情報を提供することが可能かを検討する材料を与えられます。

安田 陽(関西大学)「欧州の風力発電の躍進と出力予測の便益」
 風力発電は全世界で飛躍的に導入されており、もはや基幹電源の一つとして見なされつつあります。それに対し、日本は世界の潮流から大きく引き離され周回遅れの様相を呈していますが、残念ながらこのような客観的な分析はマスコミ等でもあまり取り上げられず、一般の方になかなか伝わっていないのが現状です。本講演では、なぜこれほどまでに欧州の風力発電が飛躍的な発展を遂げたのか、日本は彼らから何を学ぶべきなのかを、具体的なデータを提示しながらわかりやすく解説します。さらに風力発電の出力予測が欧州の系統運用の現場で実際にどのように使われ、どれほど大きな便益(かけたコストに対するリターン)を生み出しているかを紹介します。

嶋田 進(産業技術総合研究所)「風力発電と気象との関わり」
 近年、陸上や洋上での風力発電の普及拡大においてリモートセンシングなどの観測技術の高度化からメソ気象モデルやLESなどの数値モデルの汎用化まで気象学の進展がその重要な役割を担っています。基礎的な事柄としてまず風力発電における気象条件の重要性から話をスタートして、続いて風力発電施設の計画や運用において気象学をベースとした計測および解析技術がどのように利用されているのかを紹介します。さらには、欧州との比較より、日本の風力発電における特有の課題を示すとともに今後の想定される研究の方向性についても述べます。

中島 孝(東海大学)「衛星データを利用した再生可能エネルギーの推定」
 再生可能エネルギーと気象学の親和性は高い。例えば、日射、風、地上気温などは、それぞれ太陽光発電、風力発電、エネルギー需要に関わる重要な地球物理量です。したがって再生可能エネルギーの効率的利用を目指すためには、まず観測からこのような地球物理量を把握し、そして活用することが重要です。なかでも、全地球規模を均質に観測する手段として人工衛星の活用に大きな期待が寄せられています。本講演では、天気予報でおなじみの気象衛星「ひまわり」や地球環境観測衛星を使った地球物理量の推定(特に日射量)の最前線について紹介し、その活用方法について検討してみます。

総合討論 加藤輝之(気象研究所)
 今回取り上げた太陽光・風力発電は、ともに気象の影響を強く受け、その出力は不安定です。その一方、電力は安定に供給されることが求められています。われわれはこの2つの相反するものに気象学を応用し、火力や水力なども含めた電力系統をできる限り効率よく運用することを考えなければなりません。将来、明日の系統運用計画に欠かせない数値予報が改善され、気象庁が6時間先まで実施している降水短時間予報の、「地上日射量」や「地上風速」版が構築されて、直近の系統運用に利用されることになるでしょう。そのためには、分野を超えた連携が必要不可欠だと考えており、みなさまの貴重なご意見をお聞かせください。

参考資料:第37回メソ気象研究会の報告―再生エネルギーとメソ気象との関わり―
 資料のダウンロードはこちら

最終更新:2013.5.21

 問い合わせ

メソ気象研究会(気象学会メソ気象研究連絡会)、
および、本ホームページへのご質問・お問い合わせなどは

 tkato@mri-jma.go.jp (@は小文字にしてください)

までお寄せください。

世話人:坪木和久(名大地球水循環),加藤輝之(気象庁気象研究所),小倉義光(東大大気海洋研)